EIGRP(Enhanced Interior Gateway Routing Protocol)は、シスコが独自に開発したハイブリッド型ルーティングプロトコルです。本記事では、EIGRPの基本設定手順、ネイバー確認方法、ルーティングテーブルの確認手順について、具体例を用いて解説します。EIGRPの動作理解や設定のポイントを押さえることで、より効率的なネットワーク設計が可能になります。
EIGRPとは?
EIGRPはCisco独自のルーティングプロトコルで、ディスタンスベクタ型とリンクステート型の特徴を兼ね備えたハイブリッドプロトコルです。独自の DUAL (Diffusing Update Algorithm) によって、迅速で効率的なルート収束を実現し、安定したルーティングを提供します。
主なEIGRPの特徴
- ハイブリッド型: ディスタンスベクタ型とリンクステート型の両方の利点を持つ。
- 迅速なルート収束: DUALアルゴリズムによって、ネットワークトポロジの変化に迅速に対応。
- 帯域幅と遅延を考慮したメトリック: 複数の経路評価指標を用いることで、最適な経路を選択。
EIGRPの基本設定方法
EIGRPを導入するためには、まずAS番号(Autonomous System Number)を決定します。すべてのルータで一致させる必要があり、AS番号が異なる場合、隣接関係は形成されません。本記事ではAS番号 100 を例に設定を行います。
以下の構成で、R2およびR3のEIGRP設定例
AS番号が一致しないルータ間では隣接関係になれず、ルートの交換ができません。
次に、networkコマンドで、EIGRPを有効にするインタフェースを指定します。有効にされたインタフェースでは、EIGRPパケットが送信され、かつ、そのインタフェースのネットワーク情報が広告対象になります。
R2(config)# router eigrp 100 R2(config-router)# network 2.2.2.2 0.0.0.0 R2(config-router)# network 192.168.23.0
R3(config)# router eigrp 100 R3(config-router)# network 3.3.3.3 0.0.0.0 R3(config-router)# network 192.168.23.0
networkコマンドでインターフェースを指定するには、ワイルドカードマスクを使用します。 指定しない場合は、自動的にクラスフルとして認識されます。例えば、2.2.2.2 0.0.0.0 の場合は、2.2.2.2/32のインタフェースが対象になります。192.168.23.0の場合は、ワイルドカードマスクがないため、Cクラス(/24)として認識され、対象のインタフェースが決まります。
EIGRPのネイバー確認方法
設定後、ルータ間でHelloパケットを相互に送信して、しばらくすると、隣接関係が確立されたコンソールログが出力されます。
%DUAL-5-NBRCHANGE: EIGRP-IPv4 100: Neighbor 192.168.23.3 (FastEthernet0/0.23) is up: new adjacency
ネイバー状態を確認するには、show ip eigrp neighbors を実行します。
R2# show ip eigrp neighbors EIGRP-IPv4 Neighbors for AS(100) H Address Interface Hold Uptime SRTT RTO Q Seq (sec) (ms) Cnt Num 0 192.168.23.3 Fa0/0.23 13 00:02:44 11 100 0 6
R3# show ip eigrp neighbors EIGRP-IPv4 Neighbors for AS(100) H Address Interface Hold Uptime SRTT RTO Q Seq (sec) (ms) Cnt Num 0 192.168.23.2 Fa0/0.23 12 00:03:08 832 4992 0 6
ルーティングテーブルの確認
ルーティングテーブルより、対向ルータのループバックアドレスを学習していることが確認できます。
R2# show ip route eigrp Codes: L - local, C - connected, S - static, R - RIP, M - mobile, B - BGP D - EIGRP, EX - EIGRP external, O - OSPF, IA - OSPF inter area N1 - OSPF NSSA external type 1, N2 - OSPF NSSA external type 2 E1 - OSPF external type 1, E2 - OSPF external type 2 i - IS-IS, su - IS-IS summary, L1 - IS-IS level-1, L2 - IS-IS level-2 ia - IS-IS inter area, * - candidate default, U - per-user static route o - ODR, P - periodic downloaded static route, H - NHRP, l - LISP + - replicated route, % - next hop override Gateway of last resort is not set 3.0.0.0/32 is subnetted, 1 subnets D 3.3.3.3 [90/156160] via 192.168.23.3, 00:02:55, FastEthernet0/0.23
R3# show ip route eigrp Codes: L - local, C - connected, S - static, R - RIP, M - mobile, B - BGP D - EIGRP, EX - EIGRP external, O - OSPF, IA - OSPF inter area N1 - OSPF NSSA external type 1, N2 - OSPF NSSA external type 2 E1 - OSPF external type 1, E2 - OSPF external type 2 i - IS-IS, su - IS-IS summary, L1 - IS-IS level-1, L2 - IS-IS level-2 ia - IS-IS inter area, * - candidate default, U - per-user static route o - ODR, P - periodic downloaded static route, H - NHRP, l - LISP + - replicated route, % - next hop override Gateway of last resort is not set 2.0.0.0/32 is subnetted, 1 subnets D 2.2.2.2 [90/156160] via 192.168.23.2, 00:02:52, FastEthernet0/0.23
EIGRPのルートは先頭にDの文字が付与されます。 [90/156160]については、前半の90はAD値で、後半の156160はメトリック値になります。複数経路から同一のルート情報を学習した場合は、メトリックの小さい方が優先ルートとなります。
EIGRPのパケットタイプ
EIGRPは以下の5つのパケットタイプを使用してルータ間の通信と情報交換を行います。
- Helloパケット: ネイバーの検出と隣接関係の維持
- Updateパケット: ルート情報の更新
- Queryパケット: ルート情報のクエリ
- Replyパケット: クエリに対する応答
- Ackパケット: 確認応答
これらのパケットがどのように動作するかについての詳細は、以下の記事を参考にしてください。
>> 参考 : パケット(Hello / Update / Query / Reply / Ack)の詳細
コメント