EIGRP は、メトリックが最も小さい経路を最適な経路として選びます。経路を選ぶときに出てくるのが、FD(Feasible Distance:フィージブルディスタンス)と AD(Advertised Distance:アドバタイズドディスタンス)という2つの値です。この記事では、3台のルータの構成で FD と AD を順にたどり、トポロジテーブルとルーティングテーブルでの見え方を確認します。
- AD と FD の違い(誰から見た、どこまでの距離か)
- トポロジテーブルの
(FD/AD)の読み方 - ルーティングテーブルに表示されるメトリックとの関係
AD と FD
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| AD(Advertised Distance) | 隣のルータが広告してくる、隣のルータから宛先までのメトリック。RFC では Reported Distance(RD)と呼ぶ |
| FD(Feasible Distance) | 自分から宛先までのメトリックのうち最小のもの。AD に、自分から隣のルータまでのメトリックを足して求める |
メトリックは帯域幅や遅延などから計算します。既定では帯域幅と遅延だけを使います。計算方法は メトリック計算(K 値) を参照してください。この記事では、説明を簡単にするため、各リンクのメトリックが 256 になるようにしています。
検証構成
R3 から見た FD と AD
R4 は、ループバック 4.4.4.4/32 をメトリック 256 で R3 に広告します。R3 から見ると、この 256 が AD です。R3 から R4 までのメトリックも 256 なので、R3 から 4.4.4.4/32 までのメトリックは 512(256 + 256)になり、これが FD です。
show ip eigrp topology:R3 のトポロジテーブル
R3
R3# show ip eigrp topology
EIGRP-IPv4 Topology Table for AS(100)/ID(3.3.3.3)
Codes: P - Passive, A - Active, U - Update, Q - Query, R - Reply,
r - reply Status, s - sia Status
P 192.168.23.0/24, 1 successors, FD is 2560
via Connected, FastEthernet0/0.23
P 192.168.34.0/24, 1 successors, FD is 256
via Connected, FastEthernet0/0.34
P 4.4.4.4/32, 1 successors, FD is 512
via 192.168.34.4 (512/256), FastEthernet0/0.34
| 表示 | 意味 |
|---|---|
| FD is 512 | R3 から 4.4.4.4/32 への FD |
| (512/256) | 前の 512 は、このネイバー(192.168.34.4、R4)経由で計算した R3 からのメトリック。後ろの 256 は、R4 が広告してきた AD |
4.4.4.4/32 への経路はこの1つだけなので、R4 経由の経路が最小のメトリックを持つ経路、つまりサクセサです。サクセサ経由のメトリックがそのまま FD になるので、ここでは (512/256) の前の値と FD が一致しています。
show ip route eigrp:R3 のルーティングテーブル
ルーティングテーブルには、サクセサの経路が、FD と同じメトリックで入ります。
R3
R3# show ip route eigrp
4.0.0.0/32 is subnetted, 1 subnets
D 4.4.4.4 [90/512] via 192.168.34.4, 01:13:40, FastEthernet0/0.34
R2 から見た FD と AD
R3 は、自分の 4.4.4.4/32 までのメトリック 512 を R2 に広告します。R2 から見ると、この 512 が AD です。R2 から R3 までのメトリックは 256 なので、R2 の FD は 768(256 + 512)になります。
R2
R2# show ip eigrp topology
EIGRP-IPv4 Topology Table for AS(100)/ID(2.2.2.2)
Codes: P - Passive, A - Active, U - Update, Q - Query, R - Reply,
r - reply Status, s - sia Status
P 192.168.23.0/24, 1 successors, FD is 256
via Connected, FastEthernet0/0.23
P 192.168.34.0/24, 1 successors, FD is 512
via 192.168.23.3 (512/256), FastEthernet0/0.23
P 4.4.4.4/32, 1 successors, FD is 768
via 192.168.23.3 (768/512), FastEthernet0/0.23
R2
R2# show ip route eigrp
4.0.0.0/32 is subnetted, 1 subnets
D 4.4.4.4 [90/768] via 192.168.23.3, 01:14:19, FastEthernet0/0.23
D 192.168.34.0/24 [90/512] via 192.168.23.3, 01:14:19, FastEthernet0/0.23
R3 にとっての FD(512)が、R2 にとっての AD になっています。このように、ルータは自分の FD を隣のルータに広告し、受け取った側はそれを AD として使います。
メトリックは、宛先へ向かう方向の出力インタフェースの値で計算します。R2 のトポロジテーブルでは 192.168.23.0/24 の FD が 256 ですが、R3 のトポロジテーブルでは同じ 192.168.23.0/24 の FD が 2560 です。R2 と R3 のインタフェースで、メトリックの元になる値が違っているためです。
FD と AD を何に使うか
FD と AD は、最適な経路(サクセサ)を選ぶだけでなく、バックアップの経路(フィージブルサクセサ)を決めるときにも使います。隣のルータの AD が自分の FD より小さければ、その経路はループしないと判断できます。詳しくは フィージブルサクセサ の記事で扱っています。
まとめ
| 項目 | R3 から見た値 | R2 から見た値 |
|---|---|---|
| AD(隣のルータが広告した距離) | 256(R4 から) | 512(R3 から) |
| FD(自分からの最小の距離) | 512 | 768 |
| トポロジテーブルの表示 | (512/256) | (768/512) |
| ルーティングテーブルのメトリック | [90/512] | [90/768] |
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