OSPFはコスト値、RIPはホップ数をメトリック値として使用しますが、EIGRPのメトリック値は少々複雑です。
EIGRPでは、以下の公式によりメトリックが計算されます。
メトリック= [K1 * 帯域幅 +((K2 * 帯域幅)/(256-負荷))+ K3 * 遅延 ]* [K5 /(信頼性+ K4)
このK1〜K5の値を総称してK値と呼びます。
この公式を見ると、メトリックには帯域幅、負荷、遅延、信頼性 により影響されることがわかります。ただし、デフォルトでのK値は決まっており、K1=1, K2=0, K3=1, K4=0, K5=0 です。
デフォルトのK値をメトリックの公式に当てはめると、以下となります。
メトリック=帯域幅(最も遅いリンク)+遅延(遅延の合計)
では、メトリックを構成する各要素について確認します。
帯域幅
show interface で出力されるBWが帯域幅です。
R2# show interfaces fastEthernet 0/0.23
FastEthernet0/0.23 is up, line protocol is up
Hardware is DEC21140, address is 0000.0000.2222 (bia ca02.06fb.0000)
Internet address is 192.168.23.2/24
MTU 1500 bytes, BW 100000 Kbit/sec, DLY 100 usec,
100000kbit/secは、100Mbpsであることがわかります。 bandwidthコマンドで変更することができます。
メトリックで使用する際は、(10000000/最小帯域幅)*256 で計算します。
遅延
show interface で出力されるDLYが遅延です。
R2# show interfaces fastEthernet 0/0.23
FastEthernet0/0.23 is up, line protocol is up
Hardware is DEC21140, address is 0000.0000.2222 (bia ca02.06fb.0000)
Internet address is 192.168.23.2/24
MTU 1500 bytes, BW 100000 Kbit/sec, DLY 100 usec,
パケットがこのリンクを通過するのに必要な遅延時間です。FastEthernetでは100usecがデフォルト値です。 delayコマンドで変更することができます。
メトリックで使用する際は、(遅延値の合計/10)*256で計算します。
下記構成で、R2からみたR4のループバックのメトリックを計算します。 ループバックアドレスの帯域幅と遅延は、以下の通りです。
R4# show interfaces loopback 0 Loopback0 is up, line protocol is up Hardware is Loopback Internet address is 4.4.4.4/32 MTU 1514 bytes, BW 8000000 Kbit/sec, DLY 5000 usec, reliability 255/255, txload 1/255, rxload 1/255
- 帯域幅: R2〜R4のループバック間で最小帯域幅は100,000kbit/secですので、メトリックには、(10,000,000/最小帯域幅(100,000))*256 =25,600
- 遅延: R2〜R3で100usec 、R3〜R4で100usec、R4のループバックで5,000usecのため、合計5,200usec メトリックには (遅延値の合計(5200)/10)*256 = 133120
- メトリック=帯域幅+遅延=25,600+133,120=158,720
show ip eigrp topologyを確認すると、上記メトリック値が確認できます。
R2# show ip eigrp topology EIGRP-IPv4 Topology Table for AS(100)/ID(2.2.2.2) Codes: P - Passive, A - Active, U - Update, Q - Query, R - Reply, r - reply Status, s - sia Status P 192.168.23.0/24, 1 successors, FD is 28160 via Connected, FastEthernet0/0.23 P 192.168.34.0/24, 1 successors, FD is 30720 via 192.168.23.3 (30720/28160), FastEthernet0/0.23 P 4.4.4.4/32, 1 successors, FD is 158720 via 192.168.23.3 (158720/156160), FastEthernet0/0.23 P 2.2.2.2/32, 1 successors, FD is 128256 via Connected, Loopback0 P 3.3.3.3/32, 1 successors, FD is 156160 via 192.168.23.3 (156160/128256), FastEthernet0/0.23
負荷(txload, rxload)、信頼性(reliability)はshow interfaceで確認できます。ただし、これらの値は、通信や回線状況により動的に変化する値です。EIGRPのルーティングで、通信状況により、ルートが変更されるのは好ましくありません。そのため、通常はこれらをメトリックとして使用することはありません。
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