グループポリシーには、最初から多くの管理用テンプレートが組み込まれています。管理用テンプレートは、グループポリシーで設定できる項目(どのレジストリをどう設定するか)と、その表示名や説明を定義したファイルです。
Chrome などのテンプレートを追加するとき、ドメインコントローラのローカルフォルダに置くと、そのコンピューターのエディタでしか使えません。この記事では、セントラルストアを作って管理用テンプレートを SYSVOL に置き、ドメインコントローラ間で複製して共有する手順を確認します。
- 管理用テンプレート(ADMX/ADML)の保存場所と役割
- PolicyDefinitions フォルダを SYSVOL にコピーしてセントラルストアを作る
- グループポリシー管理エディタでセントラルストアの使用を確認する
- もう1台のドメインコントローラに複製されたことを確認する
管理用テンプレートの保存場所
管理用テンプレートは、言語に依存しない ADMX ファイルと、言語ごとの ADML ファイルに分かれています。ADMX は設定項目とレジストリの対応を、ADML はエディタに表示する名前や説明文を定義します。
| ファイル | 中身 | 置き場所(ローカル) |
|---|---|---|
ADMX(.admx) | 設定項目、カテゴリ、対応するレジストリキーと値 | C:\Windows\PolicyDefinitions |
ADML(.adml) | 表示名や説明文などの言語ごとの文字列 | C:\Windows\PolicyDefinitions\ja-JP など言語名のフォルダ |
セントラルストアがないとき、グループポリシー管理エディタはローカルの C:\Windows\PolicyDefinitions にある ADMX を読み込みます。エディタの「管理用テンプレート」には、そのことが表示されています。
この記事の画面は、実際の画面ではなく、検証時の画面から設定する項目(見るポイント)を抜き出して描いたイメージです。バージョンによって、項目の並びや表記は変わります。
Default Domain Policy [AD-1.HIROTANOBLOG.LOCAL] ポリシー▾ コンピューターの構成 ▾ ポリシー › ソフトウェアの設定 › Windows の設定1 ▾ 管理用テンプレート: ローカル コンピューターから取得したポリシー定義 (ADMX) ファイルです。 › Windows コンポーネント › コントロール パネル サーバー › システム › タスク バーと [スタート] メニュー › ネットワーク プリンター すべての設定
| No. | 表示 | 意味 |
|---|---|---|
| 1 | ローカル コンピューターから取得したポリシー定義 (ADMX) ファイル | このエディタは、エディタを動かしているコンピューターの C:\Windows\PolicyDefinitions を読み込んでいます |
エクスプローラーで C:\Windows\PolicyDefinitions を開くと、ADMX ファイルと、言語ごとの ADML を入れたフォルダ(en-US、ja-JP)があります。
| 名前 | 更新日時 | 種類 |
|---|---|---|
| 1en-US | 2018/09/16 1:50 | ファイル フォルダー |
| ja-JP | 2022/07/31 14:36 | ファイル フォルダー |
| 2ActiveXInstallService.admx | 2018/09/15 16:13 | ADMX ファイル |
| AddRemovePrograms.admx | 2018/09/15 16:13 | ADMX ファイル |
| AllowBuildPreview.admx | 2018/09/15 16:13 | ADMX ファイル |
| AppCompat.admx | 2018/09/15 16:13 | ADMX ファイル |
| AppPrivacy.admx | 2018/09/15 16:12 | ADMX ファイル |
| appv.admx | 2018/09/16 1:53 | ADMX ファイル |
| ⋮ (中略) | ||
| No. | 表示 | 意味 |
|---|---|---|
| 1 | en-US、ja-JP | 言語ごとの ADML を入れるフォルダです |
| 2 | ○○.admx | 設定項目を定義した ADMX ファイルです |
GPO で有効にした設定そのものは、ADMX ではなく GPO のフォルダ(SYSVOL の Policies\{GUID})に保存され、ドメインコントローラ間で複製されます。ADMX と ADML は、管理者がエディタで設定項目を表示・編集するときに使うファイルです。クライアントに ADMX を配る必要はありません。
ローカルに追加したテンプレートの問題
検証環境は、Windows Server 2019 で構成したドメイン hirotanoblog.local で、ドメインコントローラは AD-1 と AD-2 の2台です。AD-1 の C:\Windows\PolicyDefinitions に、Chrome の管理用テンプレートを追加しています。追加の手順は、次の記事で紹介しています。
>> 参考記事:【Active Directory】Chromeをグループポリシーで管理(管理用テンプレートの追加)
AD-1 のエディタには「Google」が増えていますが、読み込み元は「ローカル コンピューターから取得したポリシー定義」のままです。
Default Domain Policy [AD-1.HIROTANOBLOG.LOCAL] ポリシー▾ コンピューターの構成 ▾ ポリシー › ソフトウェアの設定 › Windows の設定1 ▾ 管理用テンプレート: ローカル コンピューターから取得したポリシー定義 (ADMX) ファイルです。2 › Google › Windows コンポーネント › コントロール パネル サーバー › システム
| No. | 表示 | 意味 |
|---|---|---|
| 1 | ローカル コンピューターから取得した… | まだ AD-1 のローカルフォルダを読み込んでいます |
| 2 | 追加した Chrome のテンプレートのカテゴリです |
C:\Windows\PolicyDefinitions は各コンピューターのローカルフォルダで、共有もされず、ドメインコントローラ間で複製もされません。このため、AD-2 や管理用の PC でエディタを開くと、Chrome の設定項目は表示されません。管理する場所ごとに ADMX を置いて回る必要があり、バージョンもそろえにくくなります。
セントラルストアを作る
セントラルストアは、SYSVOL の Policies フォルダの下に作る PolicyDefinitions フォルダです。グループポリシーのツールは、このフォルダがあれば既定でここを読み込みます。SYSVOL の中身はドメイン内のすべてのドメインコントローラに複製されるので、テンプレートを1か所に置けば全体で同じものを使えます。
PolicyDefinitions を SYSVOL にコピーする
AD-1 で、C:\Windows\PolicyDefinitions フォルダごと、SYSVOL の Policies フォルダにコピーします。ドメインコントローラの SYSVOL は、インストール先を変えていなければ C:\Windows\SYSVOL にあります。
| 項目 | パス(hirotanoblog.local の場合) |
|---|---|
| コピー元 | C:\Windows\PolicyDefinitions |
| コピー先(ローカルパス) | C:\Windows\SYSVOL\sysvol\hirotanoblog.local\Policies |
| コピー先(共有パス) | \\hirotanoblog.local\SYSVOL\hirotanoblog.local\Policies |
| できあがるセントラルストア | …\Policies\PolicyDefinitions |
コピー先の Policies には、もともと GPO が GUID の名前のフォルダで保存されています。たとえば {31B2F340-016D-11D2-945F-00C04FB984F9} は Default Domain Policy、{6AC1786C-016F-11D2-945F-00C04fB984F9} は Default Domain Controllers Policy です。ここに PolicyDefinitions フォルダが加わります。
- マイクロソフトは、コピー元として最新の Windows 10/11 クライアントの
C:\Windows\PolicyDefinitions、または別途ダウンロードした管理用テンプレートのフォルダを挙げています。 - セントラルストアができると、エディタはローカルの
PolicyDefinitionsではなくセントラルストアだけを読み込みます。Chrome のような追加テンプレートや、使う言語の ADML フォルダ(ja-JPなど)も忘れずにセントラルストアに入れます。 - あとで新しいテンプレートを追加したときも、ローカルに置いただけでは SYSVOL は更新されません。セントラルストアに手動でコピーします。
動作確認
エディタの読み込み元を確認する
AD-1 でグループポリシー管理エディタを開き直すと、「セントラル ストアから取得したポリシー定義」に変わります。PolicyDefinitions フォルダをコピーするだけで、特別な設定をしなくてもセントラルストアとして認識されます。
Default Domain Policy [AD-1.HIROTANOBLOG.LOCAL] ポリシー▾ コンピューターの構成 ▾ ポリシー › ソフトウェアの設定 › Windows の設定1 ▾ 管理用テンプレート: セントラル ストアから取得したポリシー定義 (ADMX) ファイルです。 › Google › Windows コンポーネント › コントロール パネル サーバー › システム › タスク バーと [スタート] メニュー › ネットワーク プリンター すべての設定
| No. | 表示 | 意味 |
|---|---|---|
| 1 | セントラル ストアから取得したポリシー定義 (ADMX) ファイル | SYSVOL の PolicyDefinitions を読み込んでいます。コピーに含めた Chrome のテンプレート(Google)も表示されています |
AD-2 に複製されたことを確認する
AD-2 で SYSVOL の Policies フォルダを開くと、PolicyDefinitions フォルダが複製されています。同じ画面の PowerShell で hostname を実行し、AD-2 で見ていることを確かめています。
| 名前 | 更新日時 | 種類 |
|---|---|---|
| {1E608DF3-C405-42F0-9AC0-2A7C49EB45… | 2022/09/20 19:31 | ファイル フォルダー |
| {6AC1786C-016F-11D2-945F-00C04fB984F9} | 2022/09/18 11:57 | ファイル フォルダー |
| {31B2F340-016D-11D2-945F-00C04FB984F9} | 2022/09/20 19:34 | ファイル フォルダー |
| {B048D3E9-5B1F-46C2-AAA6-13ABC7838… | 2022/09/20 19:31 | ファイル フォルダー |
| 1PolicyDefinitions | 2022/09/20 23:37 | ファイル フォルダー |
管理者: Windows PowerShell2PS C:\> hostnameAD-2
| No. | 表示 | 意味 |
|---|---|---|
| 1 | PolicyDefinitions | AD-1 でコピーしたセントラルストアが、SYSVOL の複製で AD-2 にも届いています |
| 2 | hostname → AD-2 | このフォルダを AD-2 上で見ていることを示しています |
AD-2 で開いたグループポリシー管理エディタでも、「セントラル ストアから取得したポリシー定義」と表示され、Google のカテゴリも見えます。
1Default Domain Policy [AD-1.HIROTANOBLOG.LOCAL] ポリシー▾ コンピューターの構成 ▾ ポリシー › ソフトウェアの設定 › Windows の設定2 ▾ 管理用テンプレート: セントラル ストアから取得したポリシー定義 (ADMX) ファイルです。 › Google › Windows コンポーネント › コントロール パネル ⋮PS C:\> hostnameAD-2
| No. | 表示 | 意味 |
|---|---|---|
| 1 | [AD-1.HIROTANOBLOG.LOCAL] | エディタが接続しているドメインコントローラです。AD-2 で起動しても、編集先は AD-1 になっています |
| 2 | セントラル ストアから取得した… | AD-2 のローカルフォルダではなく、セントラルストアのテンプレートが使われています |
グループポリシーの編集は、既定では PDC エミュレータの役割を持つドメインコントローラに対して行われます。このため、AD-2 で起動してもタイトルは AD-1 になっています。AD-2 自身の SYSVOL に複製されたかどうかは、図7 のように AD-2 のフォルダを直接見るのが確実です。
PDC エミュレータがどのドメインコントローラかは、Get-ADDomain | Select-Object PDCEmulator で確認できます。グループポリシーの管理コンソールでは、ドメインを右クリックして「ドメイン コントローラーの変更」から接続先を変えられます。
うまくいかないとき
| 状態 | よくある原因 | 確認すること |
|---|---|---|
| エディタの表示が「ローカル コンピューターから取得した…」のまま | フォルダの名前や場所が違う | …\sysvol\ になっているか(Policies の直下か、フォルダ名に余分な文字がないか) |
| ローカルにあった設定項目が表示されなくなった | セントラルストアにその ADMX が入っていない | セントラルストアができるとローカルは読み込まれません。追加テンプレートの ADMX と ADML をセントラルストアにもコピーする |
| 表示名や説明が読み込めないというエラーになる | 使っている言語の ADML フォルダがない、または ADMX と版が合っていない | ja-JP などのフォルダと、ADMX と同じ版の ADML がそろっているか |
| 他のドメインコントローラに PolicyDefinitions がない | SYSVOL の複製が終わっていない、または止まっている | しばらく待ってから再確認する。DFS Replication のイベントログにエラーが出ていないか |
まとめ
| 項目 | ローカル | セントラルストア |
|---|---|---|
| 場所 | C:\Windows\PolicyDefinitions | C:\Windows\SYSVOL\sysvol\ |
| 使えるエディタ | そのコンピューターのエディタだけ | ドメインのどこでエディタを開いても同じテンプレート |
| 複製 | されない | SYSVOL の複製ですべてのドメインコントローラに届く |
| エディタの表示 | ローカル コンピューターから取得した… | セントラル ストアから取得した… |
| 作り方 | ― | PolicyDefinitions フォルダを Policies の下にコピーするだけ |
テンプレートを追加するときは、セントラルストアに置くことで、ドメインコントローラや管理用 PC ごとの差をなくせます。
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