【Active Directory】簡単なパスワードを持つユーザーの作成(PSOによるパスワードポリシー)

Active Directory のドメインでは、不正なサインインを防ぐために、ユーザーのパスワードに長さや複雑さの条件を付けるのが普通です。一方で、来客に短い期間だけ社内の PC を使ってもらう場合など、特定のユーザーだけ簡単なパスワードを許したいこともあります。

この記事では、細かい設定が可能なパスワード ポリシー(PSO:パスワード設定オブジェクト)を使い、一時的なユーザーにだけ簡単なパスワードを許可する手順を確認します。

この記事でわかること
  1. Active Directory ユーザーとコンピューターで、一時的なユーザーを作成する
  2. Active Directory 管理センターで、複雑さを求めない PSO を作成する
  3. ユーザーに PSO を割り当て、簡単なパスワードに変更できることを確かめる

PSO(パスワード設定オブジェクト)とは

ドメインのパスワード ポリシーは、通常は Default Domain Policy(GPO)で設定し、ドメインのすべてのユーザーに同じ条件が適用されます。PSO を使うと、特定のユーザーやグループにだけ、別のパスワード ポリシーとアカウント ロックアウト ポリシーを適用できます(図1)。

hirotanoblog.local PSO が優先 直接の適用 ドメインのパスワード ポリシーDefault Domain Policy(GPO) PSO:Password_Simple優先順位 1・最小 3 文字・複雑さなし ほかのドメイン ユーザードメインのポリシーを使う guest001PSO の設定を使う
図1 PSO を直接適用したユーザーには、ドメインのポリシーではなく PSO の設定が使われる

PSO には、パスワードとロックアウトの設定がひとそろい入っています。適用されたユーザーには、ドメインのポリシーではなく、その PSO の設定が使われます。

項目内容
適用できる相手ユーザーと、グローバル セキュリティ グループ。OU には適用できない
複数の PSO が当たる場合ユーザーに直接適用された PSO が、グループ経由の PSO より優先される。同じ条件どうしでは「優先順位」の値が小さい PSO が使われる
PSO が当たらない場合ドメインのパスワード ポリシー(Default Domain Policy)が使われる
作成できる人既定では Domain Admins のメンバー(ほかのユーザーに権限を委任することもできる)
保存場所System ›› Password Settings Container。Active Directory 管理センターか PowerShell で作成する

仮パスワードを持つユーザーを作成する

まず、一時的に使うユーザーを Active Directory に作成します。

画面イメージについて

この記事の画面は、実際の画面ではなく、検証時の画面から設定する項目(見るポイント)を抜き出して描いたイメージです。バージョンによって、項目の並びや表記は変わります。

ユーザーを作成する

ドメイン コントローラーのサーバー マネージャーで ツール ›› Active Directory ユーザーとコンピューター を開きます。ユーザーを作成する OU(今回は営業部 OU)を右クリックし、新規作成 ›› ユーザー を選びます。

ユーザー ログオン名を入力して[次へ]を押し、次の画面で初期パスワードを入力します。今回のユーザー ログオン名は guest001 です。「ユーザーは次回ログオン時にパスワード変更が必要」にチェックを入れて[次へ]を押します。

新しいオブジェクト – ユーザー画面イメージ
作成先:hirotanoblog.local/営業部
姓 
1名guest001
フル ネームguest001
2ユーザー ログオン名guest001 @hirotanoblog.local
ユーザー ログオン名(Windows 2000 より前)HIROTANOBLOG\ guest001
< 戻る次へ >キャンセル
(次の画面)
3パスワード●●●●●●●●●●●●
パスワードの確認入力●●●●●●●●●●●●
4オプション☑ ユーザーは次回ログオン時にパスワード変更が必要
☐ ユーザーはパスワードを変更できない
☐ パスワードを無期限にする
☐ アカウントは無効
< 戻る次へ >キャンセル
図2 ユーザーの作成(実際の画面ではなく、設定項目のポイントを示したイメージです)
No.項目設定内容
1名guest001(フル ネームにも同じ値が入る)
2ユーザー ログオン名サインインに使う名前。今回は guest001
3パスワード初期パスワード。ドメインのパスワード ポリシー(複雑さの要件など)を満たすものにする
4オプション「次回ログオン時にパスワード変更が必要」にチェックを入れ、最初のサインインでユーザー自身にパスワードを変えてもらう
補足

この時点では、まだ guest001 に PSO を割り当てていません。そのため、初期パスワードにはドメインのパスワード ポリシーが適用され、簡単なパスワードは設定できません。簡単なパスワードを使えるのは、PSO を割り当てたあとです。

確認の画面に、作成されるオブジェクトの内容が表示されます。内容を確かめて[完了]を押すと、ユーザーが作成されます。

新しいオブジェクト – ユーザー画面イメージ
作成先:hirotanoblog.local/営業部
1作成されるオブジェクトフル ネーム: guest001
ユーザー ログオン名: guest001@hirotanoblog.local
ユーザーは次回ログオン時にパスワード変更が必要
< 戻る2完了キャンセル
図3 作成するユーザーの確認(実際の画面ではなく、表示のポイントを示したイメージです)
No.表示意味
1作成されるオブジェクト入力した名前と、次回ログオン時のパスワード変更が設定されていることを確かめる
2[完了]ユーザーを作成する

簡単なパスワード用の PSO を作成する

次に、Active Directory 管理センターで、複雑さを求めない PSO を作成します。

PSO を作成する

サーバー マネージャーで ツール ›› Active Directory 管理センター を開きます。左のナビゲーションで hirotanoblog(ローカル) ›› System ›› Password Settings Container を開き、右のタスクで 新規 ›› パスワードの設定 を選びます。

「パスワードの設定 の作成」の画面が開きます。名前と優先順位は必須の項目です。今回は名前を Password_Simple、優先順位を 1 にし、パスワードの最小の長さを 3 にします。さらに、パスワードの履歴、複雑さ、最小と最大のパスワード有効期間のチェックを外し、[OK]を押します。

パスワードの設定 の作成: Password_Simple画面イメージ
パスワードの設定
1名前Password_Simple
優先順位1
2☑ パスワードの最小の長さを適用するパスワードの最小の長さ(文字数)3
3☐ パスワードの履歴を記録する記録するパスワードの数 24(無効)
☐ パスワードは要求する複雑さを満たす 
☐ 暗号化を元に戻せる状態でパスワードを保存する 
☑ 誤って削除されないように保護する 
パスワード有効期間オプション
4☐ 最小パスワード有効期間を適用するユーザーがパスワードを変更できない期間 1(無効)
☐ 最大パスワード有効期間を適用するユーザーによるパスワードの変更が必要 42(無効)
5☐ 適用するアカウント ロックアウト ポリシー失敗したログオン試行回数のカウントのリセット 30
期間(分)30(無効)
6OKキャンセル
図4 PSO の作成(実際の画面ではなく、設定項目のポイントを示したイメージです)
No.項目設定内容
1名前・優先順位Password_Simple、1。優先順位は、同じユーザーに複数の PSO が当たったときに使われ、値が小さいほど優先される
2パスワードの最小の長さ3 文字にする(画面を開いたときの値は 7)
3履歴・複雑さチェックを外す。過去のパスワードの再利用や、英大文字・英小文字・数字・記号を組み合わせない短いパスワードも使えるようになる
4パスワード有効期間最小・最大ともチェックを外す。パスワードをすぐに変更でき、期限切れにもならない
5アカウント ロックアウト今回はチェックを入れていない(画面を開いたときのまま)
6[OK]PSO を作成する

チェックを外した項目は、画面を開いたときに次の値(初期値)が入っていました。チェックを外すと、その項目の制限はなくなります。

項目初期値意味
パスワードの履歴を記録する24新しいパスワードを 24 個使うまで、過去のパスワードを再び使えない
パスワードは要求する複雑さを満たすオン英大文字・英小文字・数字・記号などを組み合わせたパスワードが必要になる
最小パスワード有効期間1 日パスワードを変更してから 1 日たつまで、もう一度変更できない
最大パスワード有効期間42 日同じパスワードを 42 日使うと、次のサインインで変更を求められる
注意

PSO が適用されたユーザーには、ドメインのアカウント ロックアウト ポリシーも使われず、PSO の設定が使われます。この PSO ではアカウント ロックアウト ポリシーを適用していないため、guest001 はパスワードを何度間違えてもロックアウトされません。簡単なパスワードと組み合わせるなら、ロックアウトを有効にしておくほうが安全です。

ユーザーに PSO を割り当てる

作成した PSO を guest001 に直接割り当てます。

guest001 に PSO を割り当てる

Active Directory 管理センターで、営業部 OU にある guest001 を右クリックし、プロパティ を選びます。「パスワードの設定」の項目にある「直接関連付けられたパスワードの設定」で[割り当て]を押します。

「パスワード設定オブジェクトの選択」の画面で、オブジェクト名に Password_Simple を入力して[名前の確認]を押し、[OK]を押します。

パスワード設定オブジェクト の選択画面イメージ
オブジェクトの種類の選択パスワード設定オブジェクト
場所の指定hirotanoblog.local
1選択するオブジェクト名を入力してくださいPassword_Simple 名前の確認
2OKキャンセル
図5 PSO の選択(実際の画面ではなく、設定項目のポイントを示したイメージです)
No.項目設定内容
1オブジェクト名Password_Simple を入力して[名前の確認]を押す。名前が確認されると下線付きの表示になる
2[OK]PSO を選択する

guest001 のプロパティに戻ると、「直接関連付けられたパスワードの設定」に Password_Simple が表示されます。[OK]を押して閉じます。

guest001(Active Directory 管理センター)画面イメージ
直接関連付けられたパスワードの設定
名前優先順位 
1Password_Simple1割り当て… クリア
2OKキャンセル
図6 ユーザーに割り当てた PSO(実際の画面ではなく、表示のポイントを示したイメージです)
No.表示意味
1Password_Simple / 1guest001 に直接割り当てた PSO と、その優先順位
2[OK]設定を保存して閉じる
補足

PSO の割り当ては、PSO のプロパティにある「直接の適用先」からも追加できます。複数のユーザーに同じ PSO を使う場合は、グローバル セキュリティ グループを作ってメンバーにし、そのグループに PSO を適用すると管理が楽です。

ユーザーに実際に適用される PSO は、Active Directory 管理センターでユーザーを右クリックし、結果のパスワード設定の表示 を選ぶと確認できます。PowerShell では Get-ADUserResultantPasswordPolicy -Identity guest001 で確認できます。

動作確認

クライアント PC で、ユーザー名 guest001 と初期パスワードでサインインします。初回のサインインなので、パスワードの変更を求められます。新しいパスワードには、3 文字の簡単なパスワード(今回は 123)を入力します。

Windows のサインイン画面(他のユーザー)画面イメージ
1サインインguest001
●●●●●●●●●●●●
サインイン先: HIROTANOBLOG
2メッセージサインインする前にユーザーのパスワードを変更する必要があります。
OK キャンセル
3パスワードの変更guest001
●●●●●●●●●●●●(現在のパスワード)
●●●(新しいパスワード)
●●●(パスワードの確認入力)
4メッセージパスワードは変更されました。
OK
図7 初回サインインでのパスワード変更(実際の画面ではなく、表示の流れを示したイメージです)
No.表示意味
1サインインguest001 と初期パスワードを入力する
2パスワード変更の要求「次回ログオン時にパスワード変更が必要」を設定したので、変更を求められる。[OK]を押す
3新しいパスワード3 文字の 123 を入力する
4変更完了3 文字で複雑さのないパスワードが受け付けられた。[OK]を押すとサインインされる

ドメインのパスワード ポリシーでは受け付けられない短いパスワードに変更できたので、guest001 には PSO の Password_Simple が適用されていることが分かります。

注意

簡単なパスワードは推測されやすく、不正なサインインの入口になります。PSO を適用するユーザーは必要な人だけに絞り、使う期間が決まっている場合は、ユーザーのプロパティでアカウントの有効期限を設定しておくと安全です。使い終わったユーザーは、無効にするか削除します。

まとめ

PSO を使うと、ドメイン全体のパスワード ポリシーを変えずに、特定のユーザーやグループにだけ別のパスワード ポリシーを適用できます。今回の手順と設定は次のとおりです。

手順使うツール設定
ユーザーの作成Active Directory ユーザーとコンピューターguest001 を営業部 OU に作成。初期パスワードはドメインのポリシーを満たすものにし、次回ログオン時の変更を必須にする
PSO の作成Active Directory 管理センターPassword_Simple、優先順位 1、最小 3 文字。履歴・複雑さ・有効期間のチェックを外す
PSO の割り当てActive Directory 管理センターguest001 の「直接関連付けられたパスワードの設定」に Password_Simple を割り当てる
動作確認クライアント PC初回サインインで、3 文字のパスワード 123 に変更できた

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