【図解】WPADとは?DHCP・DNSでプロキシ設定を自動で配る仕組みを初心者向けに解説

Windowsのプロキシ設定を開くと、いちばん上に「設定を自動的に検出する」というスイッチがあります。多くのPCではこれが最初からオンになっていて、会社のネットワークにつなぐだけでプロキシの設定が入ることがあります。その裏で動いているのが WPAD(ダブリューパッド、Web Proxy Auto-Discovery)です。

この記事では、WPADがDHCPとDNSを使ってプロキシの設定を見つける仕組みを、企業の構成図とシーケンスで説明します。利用者から見るとどう動くのか、管理者は何を用意し、どんな制限やセキュリティ上の注意があるのかもあわせて整理します。

この記事でわかること
  1. WPADとは何か、PACファイルとの関係
  2. DHCP(オプション252)とDNS(wpad)での探し方
  3. 企業での構成と、管理者が用意するもの
  4. 利用者から見た動きと、OS・ブラウザによる違い
  5. 制限とセキュリティ上の注意、ほかの配り方との使い分け
この記事について

この記事は、WPADの仕様案(IETFのインターネットドラフト)と、Microsoft、Google(Chromium)、Mozilla、Apple などが公開しているドキュメントを参考に、WPADに共通する考え方をまとめたものです。WPADは正式な標準になっておらず、OSやブラウザ、バージョンによって動きが違います。実際の環境での動作は、各製品のドキュメントで確認してください。

WPADを一言でいうと

WPADは、PCが「プロキシの設定ファイル(PACファイル)がどこにあるか」を自分で探す仕組みです。PACファイルには「社内のサイトは直接、それ以外はプロキシ1号機へ」のような、行き先ごとのルールが書かれています。WPADが探すのはあくまでPACファイルの場所で、どのプロキシを使うかはPACファイルの中身で決まります。

新しく入った社員が、受付(DHCP)や案内板(DNS)で「Webに出るときのルール集はここにあります」と教わるイメージです。PCにプロキシのアドレスを1台ずつ設定しなくても、ネットワークにつなげば設定がそろいます。

社員のPC 手動で設定 プロキシのアドレスを入力 PACのURLを設定 管理ツールで配る 自動で探す(WPAD) DHCP・DNSで場所を知る PACファイル (wpad.dat) 行き先ごとの プロキシのルール プロキシ インターネットへ PACを使わず直接プロキシを指定 WPADは、PACファイルの「場所」を自分で探す仕組み。PACの中身(どのプロキシを使うか)は別のファイル
図1 プロキシを設定する3つの方法と、WPADの位置づけ

WPADは1999年にIETFでインターネットドラフト(仕様の案)として出されましたが、正式なRFCにはならないまま期限が切れています。それでも、WindowsやmacOS、主要なブラウザが実装していて、今も企業ネットワークで使われています。標準がないため、細かい動きはOSやブラウザごとに違う点を押さえておいてください。

WPADの2つの探し方:DHCPとDNS

PCがPACファイルの場所を探す方法は、実際にはDHCPとDNSの2つです。

① DHCPで探す(オプション252) DHCPサーバ 252番の情報をください http://pac.example.local/proxy.pac URLをそのまま教えてもらう ホスト名・ポート・ファイル名は自由 ② DNSで探す(wpad という名前) pc01.tokyo.corp.example.com DNSサーバ wpad.○○ のIPは? 見つかるまで、ドメインを1段ずつ短くして探す(Windowsの例) ① wpad.tokyo.corp.example.com ② wpad.corp.example.com ③ wpad.example.com(ここで止まる) 見つかったら http://wpad.○○/wpad.dat を取りに行く(ポート80・ファイル名は固定)
図2 DHCPで探す方法と、DNSで探す方法

DHCPで探す(オプション252)

DHCPサーバに「オプション252」としてPACファイルのURLを設定しておき、PCがそれを受け取ります。URLをそのまま教えるので、ホスト名、ポート番号、ファイル名を自由に決められます。252番は、DHCPの番号のうち「各組織で自由に使ってよい範囲」にあり、正式に割り当てられた番号ではなく、WPADの慣習として使われています。

DNSで探す(wpad という名前)

PCが、自分のドメイン名の前に wpad を付けた名前をDNSで引き、見つかったサーバから http://wpad.ドメイン名/wpad.dat を取りに行きます。こちらはポート80とファイル名 wpad.dat が決まっています。Windowsの場合、見つからなければドメイン名を1段ずつ短くしながら探し、既定では2段(example.com のような形)まで来たところで止まります。ChromeやFirefoxは、ドメインを短くせず、wpad という名前をOSのDNSサフィックスで補って引きます。

両方あるときはDHCPが先

WindowsのWinHTTPやChromeは、まずDHCPを試し、DHCPで見つからなければDNSを試します。両方を設定した場合は、DHCPで受け取ったURLが使われます。

比べることDHCP(オプション252)DNS(wpad)
教えるものPACファイルのURLそのものwpad という名前のIPアドレス
URLの自由度ホスト名・ポート・ファイル名を自由に決められるポート80、ファイル名 wpad.dat に固定
届く範囲そのDHCPサーバからアドレスをもらう端末だけ同じDNSドメインを使う端末
届かない端末固定IPの端末、VPNでつなぐ端末などDNSサフィックスが違う端末
対応状況OSやブラウザによっては使わない(次の章を参照)多くのOS・ブラウザが対応

企業での構成と、管理者が用意するもの

WPADを使う企業の、典型的な構成です。PCの自動検出はオンのままにしておき、DHCPかDNSのどちらか(または両方)でPACファイルの場所を知らせます。PACファイルは社内のWebサーバに置き、止まらないように2台で持つのが一般的です。

本社 LAN(corp.example.com) 社員のPC 「自動検出」オン DHCPサーバ オプション252 DNSサーバ wpad の A レコード Webサーバ×2 wpad.dat を置く ① PACの場所を知る ② PACを取る プロキシ #1 プロキシ #2 ③ PACのルールに従ってプロキシへ FW インターネットへ DHCPとDNSは片方だけでもよい。 両方あればDHCPが先に使われる
図3 WPADを使う企業の構成例
用意するもの内容
PACファイル行き先ごとにどのプロキシを使うかを書いたファイル。DNS方式では名前を wpad.dat にする
WebサーバPACファイルを置き、認証なしで取得できるようにする。MIMEタイプを application/x-ns-proxy-autoconfig にする
DHCPサーバ(DHCP方式)オプション252を作り、PACファイルのURLを文字列で設定する
DNSサーバ(DNS方式)PCのドメインごとに wpad という名前のレコードを作り、Webサーバに向ける
PC側の設定「設定を自動的に検出する」をオンにしておく(Windowsは既定でオン)

DHCPサーバにオプション252を設定する

Windows Server のDHCPサーバでは、オプション252は最初から用意されていません。サーバを右クリックして「定義済みのオプションの設定」から追加し(コード252、データ型は文字列)、そのあとサーバオプションやスコープオプションで値にURLを入れます。ISC DHCPのような設定ファイル型のDHCPサーバでは、次のように書きます。

ISC DHCP の設定例(dhcpd.conf)

# 252番を「wpad」という名前の文字列オプションとして定義する
option wpad code 252 = text;

subnet 10.0.10.0 netmask 255.255.255.0 {
  range 10.0.10.100 10.0.10.200;
  option wpad "http://pac.corp.example.com/wpad.dat";
}

DNSに wpad のレコードを作る

DNS方式では、PCが使うドメインに wpad という名前のレコードを作り、PACファイルを置いたWebサーバのアドレスに向けます。

DNSのゾーンファイルの例(corp.example.com)

; wpad.corp.example.com を PAC を置いた Web サーバに向ける
wpad    IN  A    10.0.0.50
つまずきやすい点

Windows Server のDNSサーバには「グローバルクエリブロックリスト」という機能があり、既定で wpad と isatap の名前には応答しないようになっています。wpadのレコードを作っても返ってこない場合は、このリストから wpad を外す必要があります。なりすましを防ぐための機能なので、外すときは正しいwpadレコードを必ず登録しておきます。

WebサーバにPACファイルを置く

PACファイルは、JavaScriptの関数で書いたテキストファイルです。中身の書き方はDHCP方式でもDNS方式でも同じです。

PACファイルの例(wpad.dat)

function FindProxyForURL(url, host) {
  // 社内のサイトはプロキシを通さない
  if (isPlainHostName(host) || dnsDomainIs(host, ".corp.example.com")) {
    return "DIRECT";
  }
  // それ以外は1号機、だめなら2号機
  return "PROXY proxy1.corp.example.com:8080; PROXY proxy2.corp.example.com:8080";
}

Webサーバによっては、知らない拡張子のファイルを返さないものがあります。たとえばIISでは、拡張子 .dat にMIMEタイプを登録しておかないと、PACファイルを取得できません。

動きをシーケンスで見る

DHCPにオプション252がなく、DNSで見つかる場合の流れです。PCは自動でこの手順をこなし、利用者が何かを操作することはありません。

社員のPC 自動検出オン DHCPサーバ DNSサーバ Webサーバ wpad.dat プロキシ オプション252は? 1 なし(未設定) 2 252があれば、そのURLへ(DNSは使わない) wpad.corp.example.com のIPは? 3 10.0.0.50 4 GET /wpad.dat 5 PACファイル 6 PACで行き先ごとに プロキシを決める(結果は覚えておく) Webへのアクセス 7
図4 WPADでPACファイルを見つけるまでの流れ

PCはまずDHCPサーバにオプション252を問い合わせます。なければDNSで wpad の名前を引き、返ってきたWebサーバから wpad.dat を取得します。そのあとは、アクセスのたびにPACファイルの関数で行き先ごとのプロキシを決めます。見つけたPACの場所や中身は、しばらくのあいだ覚えておいて使い回します(どれくらい覚えるかはOSやブラウザによって違います)。

利用者から見たWPAD

利用者にとってWPADの良いところは、何も設定しなくてよいことです。会社のネットワークにつなげばプロキシ経由になり、自宅のようにWPADが見つからない場所では、プロキシを使わず直接インターネットに出ます。同じPCを持ち歩いても、場所に合わせて自動で切り替わります。

会社のネットワーク WPADで PACが見つかる プロキシ Web プロキシ経由で出る 自宅・外出先 見つからない (数秒待つことも) Web プロキシを使わず直接出る
図5 WPADは、つないだ場所によって動きが変わる

一方で、見つからない場所では探すのに時間がかかり、最初のページが開くまで数秒待たされることがあります。また、ネットワークを移ってもPCが前の結果を覚えていて、しばらくつながりにくくなることもあります。

OS・ブラウザによる違い

WPADには正式な標準がないので、対応の仕方はOSやブラウザによって違います。主なものは次のとおりです(2026年10月時点の公開情報をもとにした目安です)。

OS・ブラウザ自動検出の扱い使う方法
Windows「設定を自動的に検出する」が既定でオンDHCP → DNS の順
Edge・Chrome(Windows)OSの設定に従うDHCP → DNS の順
Chrome(Windows・ChromeOS以外)OSの設定に従うブラウザ自身はDNSのみ。OSが見つけたPACを使うこともある
FirefoxOSの設定に従うか、「このネットワークのプロキシ設定を自動検出する」を選ぶDNS。WindowsではDHCPも使う
macOS「プロキシ自動検出」をオンにしたときに使うDHCPとDNS
iOS・iPadOSプロキシを「自動」にし、URLを空にしたときに使うDHCPとDNS
Android設定画面に自動検出の項目がないPACのURLを直接指定する

管理者から見た制限と注意点

ポイント起きること対策の例
標準ではないOSやブラウザで探し方、待ち時間、覚えておく時間が違う社内で使う端末の組み合わせで動作を確かめる
DHCP方式が届かない端末固定IPの端末、VPNでつなぐ端末、DHCPを使わないOSはオプション252を受け取れないDNS方式を併用する。管理ツールでPACのURLを配る
DNS方式の固定ルールポート80、ファイル名 wpad.dat でないと見つからないWebサーバの設定とファイル名を合わせる
DNSサーバのブロックリストWindows Server のDNSは既定で wpad に応答しないブロックリストから wpad を外し、正しいレコードを登録する
Webサーバの設定MIMEタイプ未登録や認証の要求があると、PACを取得できないMIMEタイプを登録し、認証なしで取得できるようにする
PACが取れないときPACを置いたWebサーバが止まると、プロキシの設定が入らないWebサーバを2台にする(DNSラウンドロビンやロードバランサ)
プロキシの切り替えPACに複数のプロキシを書くと、ブラウザは順番に試す。ただし、OSの機能を直接使う一部のアプリは先頭のプロキシしか使わないことがあるプロキシ側も冗長化しておく
変更の反映PCが前の結果を覚えているので、PACを直してもすぐには反映されない変更は余裕を持って行い、反映までの時間を見込む
補足

古いWindows向けの資料では、他社製のDHCPサーバでオプション252を設定すると、URLの最後の1文字が欠けて読み込まれる(wpad.dat が wpad.da になる)という問題が報告されています。対策として、URLの最後に空白を1つ付ける方法が紹介されていました。うまく取得できないときは、Webサーバのアクセスログで、PCがどのURLを取りに来ているかを確認してください。

うまく動かないときに確認すること

確認方法分かること
netsh winhttp show advproxyWindows(WinHTTP)のプロキシ設定と、自動検出の設定
edge://net-internals/#proxyEdgeが今使っているプロキシ設定やPACのURL(Chromeは chrome://net-internals/#proxy)
edge://net-exportEdgeの通信ログ。WPADでPACを探す様子も記録される
nslookup wpadPCのDNSサフィックスで wpad の名前が引けるか
WebサーバのアクセスログPCが wpad.dat を取りに来ているか、どのURLで来ているか

セキュリティ上の注意:なりすまし

WPADは「wpad という名前に答えた相手から、プロキシの設定をもらう」仕組みです。そのため、攻撃者が wpad になりすまして偽のPACファイルを渡すと、PCの通信をまるごと攻撃者のプロキシに通させることができます。プロキシの認証に使う情報を盗まれるおそれもあります。

社員のPC 「wpad はどこ?」 攻撃者 名前を問い合わせる 「私が wpad です」 ! 偽のPAC 「全部ここを通せ」 Web 盗み見・ 認証情報の窃取 なりすましの入り口 LAN内の名前解決への応答 LLMNR・NetBIOS 偽のDHCPサーバ 不正なオプション252 社外DNSでの名前の衝突 社外の wpad.○○ に届く
図6 WPADのなりすましと、その入り口

2016年には、社外のDNSに wpad の問い合わせが漏れて、第三者が登録したドメインに届いてしまう「名前の衝突」の問題について、米国のUS-CERTや日本のJPCERT/CC(JVN)が注意を呼びかけました。同じ年、Windowsでは、wpadの名前をLAN内のNetBIOSで探しに行く動きが、修正プログラムで既定では止められています。

対策内容
使わないならオフにするWPADを使っていない環境では、OSやブラウザの自動検出をオフにする。Windows 10 バージョン1809以降には、WPADを止める設定もある
使うなら正しい wpad を登録しておく社内DNSに正しいwpadのレコードを登録し、ほかの機器がその名前を名乗れないようにする
LAN内の名前解決を絞るLLMNRやNetBIOS over TCP/IPを無効にし、DNS以外で名前を探さないようにする
偽のDHCPサーバを防ぐスイッチのDHCPスヌーピングで、許可したDHCPサーバ以外の応答を止める
社内のドメイン名を管理する社内で使うドメインは、自社が登録・管理しているドメインにする
外向きの wpad.dat を監視するファイアウォールやプロキシで、社外への wpad.dat の要求を記録・遮断する

WPAD以外の配り方との使い分け

PACファイルの場所は、WPADで探させるほかに、管理ツールで直接配ることもできます。会社が管理している端末なら、グループポリシーやMDM(モバイル端末管理)でPACのURLを指定するほうが、どの端末に何を配ったかがはっきりし、なりすましの心配もありません。

配り方向いている場面注意点
WPAD(DHCP・DNS)設定を配れない端末も含め、ネットワークにつないだ端末へまとめて設定したい標準ではなく動きに差がある。なりすまし対策が要る
グループポリシー・MDMでPACのURLを配る会社が管理しているWindows・Mac・スマートフォン管理ツールに入っていない端末には届かない
エージェント(クラウドのプロキシ)社外でも会社と同じルールで使わせたいエージェントの配布と管理が要る
手動設定台数が少ない、検証用の端末台数が増えると管理できない

実際には、管理している端末にはポリシーでPACのURLを配り、WPADは使わないならオフにしておく、という組み合わせがよく見られます。WPADを使う場合は、この記事の構成と対策をひととおりそろえておくと安心です。

まとめ

WPADは、PCがDHCPやDNSを使ってPACファイルの場所を自分で探す仕組みです。利用者は何も設定しなくてよい一方、標準がないため動きに差があり、なりすましへの対策も欠かせません。

内容
何をするかPACファイル(プロキシのルール)の場所を自動で探す
探し方DHCPのオプション252 → DNSの wpad の順
管理者が用意するものPACファイル、Webサーバ(MIMEタイプ)、DHCPのオプション252またはDNSのwpadレコード
利用者から見ると設定不要。社内ではプロキシ経由、社外では直接。見つからない場所では待たされることがある
主な注意点OS・ブラウザの差、DNSのブロックリスト、PACの冗長化、なりすまし対策

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