【図解】EASM(ASM)とは?外から見える自社のIT資産を見つけて守るしくみを初心者向けに解説

仮想パッチの記事では、脆弱性が公開されてからパッチを当てるまでの間をどう守るかを書きました。ただ、その手前に「外から見えている自社のサーバや機器を、そもそも全部つかめているのか」という問題があります。今回は、そこを受け持つ EASM(ASM)について、経済産業省のガイダンスと各社の公開資料を読み比べながら、しくみと運用の流れを図にしてみました。

この記事でわかること
  1. なぜ今、外から見える資産の把握が問題になっているのか
  2. EASM(ASM)とは何か。脆弱性診断や CAASM とどう違うのか
  3. EASM を使うと、どんなものが見つかるのか
  4. 各社の製品に共通するしくみ(6つの層)と、製品によって違うところ
  5. 導入の進め方と、日々の運用・優先順位の付け方
この記事について(調べた製品と免責)

この記事は、次の製品の公開資料(製品ページ、ドキュメント、データシートなど)を2026年10月時点で読み比べ、共通する考え方を一般化してまとめたものです。本文は特定の製品の実装ではなく、「こういう構成が考えられる」「こういう関係になっていることが多い」という一般例として書いています。

  • CyCognito(CyCognito)
  • CrowdStrike Falcon Exposure Management の EASM 機能(旧 Falcon Surface)
  • TrendAI Vision One(トレンドマイクロ)の Cyber Risk Exposure Management(旧 Attack Surface Risk Management)
  • Microsoft Defender External Attack Surface Management(Defender EASM)と、Microsoft Security Exposure Management との連携
  • Palo Alto Networks Cortex Xpanse
  • Tenable One Attack Surface Management、Censys の ASM、Qualys CyberSecurity Asset Management の EASM
  • 国内のサービスの発表資料(NRIセキュア「ASMimosa」、GMOサイバーセキュリティ by イエラエ「GMOサイバー攻撃 ネット de 診断 ASM」)

製品ごとの機能・方式・名称・提供状況は変わることがあり、この記事の説明がそのまま当てはまらない製品もあります。特定の製品を勧めたり、性能や効果を保証したりするものでもありません。導入や比較を検討するときは、必ずメーカーの最新のドキュメントを確認し、メーカーや販売店に問い合わせてください。

なぜ今、外から見える資産が問題になるのか

以前は、守る対象の多くが社内のデータセンターにあり、インターネットとの出入り口はファイアウォールなど数か所に絞られていました。今は、クラウドに立てたサーバ、委託先が作ったキャンペーンサイト、拠点ごとに置いた VPN 機器、開発中のサービスなど、インターネットから直接見える入口があちこちにあります(図1)。

以前:入口は少なかった今:入口が散らばっているインターネットFW社内(境界の内側)守る場所が、ほぼ境界の内側にまとまっていたインターネット本社の入口クラウドのサーバ委託先が作ったサイト拠点のVPN機器公開設定のストレージ試しに立てたAIのAPI外から見える入口が、社内の境界の外にも増えた
図1 入口が境界の内側にまとまっていた頃と、散らばっている今

入口が増えると、それぞれが今どうなっているか(誰が管理しているか、ソフトウェアは最新か、まだ使っているのか)を追いきれなくなります。担当者が異動したり、委託先との契約が終わったりすると、動いているのに誰も見ていない資産ができてしまいます。

攻撃者は公開情報から入口を探している

攻撃者は、いきなり侵入を試みるわけではありません。まず、インターネットで誰でも見られる情報から、狙えそうな入口を探します。たとえば DNS(ドメイン名と IP アドレスを対応づけるしくみ)や、証明書透過性(CT:Certificate Transparency)のログです。

CT は、Web サイトなどで使う TLS サーバ証明書が発行されたことを公開のログに記録し、不正な発行がないかを誰でも確かめられるようにするしくみです(RFC 9162)。便利なしくみですが、裏を返すと「新しいドメイン名がいつ使われ始めたか」も公開されることになります。図2は、新しいサーバを公開してから外から調べられるまでの流れです。

自社側:サーバを用意して公開する外から:公開の記録をたどって探しに来る開発担当者自社認証局(CA)証明書を発行CTログ誰でも見られる自動スキャン攻撃者の道具新しいサーバdev.example.jp1証明書を申請dev.example.jp 用2発行の記録を登録ドメイン名が載る3証明書を発行4サーバに証明書を入れて公開5新しい記録を監視6新しいドメイン名dev.example.jp7DNSでIPアドレスを調べる8ポートや画面を調べる9応答ログイン画面・バージョン公開の記録から名前を拾い、数分で調べに来た例が報告されている
図2 証明書の公開記録から、新しいサーバが探される流れ(一般例)
  • ①〜③:開発担当者が新しいサブドメイン用の証明書を申請します。認証局(CA)は発行の記録を CT ログに登録し、証明書を発行します。CT ログにはドメイン名が載ります。
  • ④:担当者がサーバに証明書を入れ、サービスを公開します。
  • ⑤〜⑥:攻撃者の自動スキャンは CT ログを見張っていて、新しく載ったドメイン名を拾います。
  • ⑦:拾った名前を DNS で引き、IP アドレスを調べます。
  • ⑧〜⑨:その IP アドレスに、開いているポートや表示される画面、ソフトウェアのバージョンを調べに行きます。

2018年に発表された研究では、CT のおとりとして証明書を発行したところ、発行から数分後にはそのドメインを狙った調査(スキャン)が届いたと報告されています。攻撃者は「設定が終わってから見に来る」のではなく、公開された直後から見に来ると考えておいたほうがよさそうです。こうした調べ物は、フロンティアAIのコラムで書いたように、AI によってさらに自動化しやすくなっています。

狙われやすいのは台帳にない資産

社内の管理台帳と、インターネットから実際に見えている資産を重ねると、図3のようにずれていることがよくあります。台帳にあって外からも見える資産は、ふだんからパッチや設定の管理が回っていることが多いです。問題になりやすいのは、台帳にないのに外から見えている資産です。

社内の管理台帳インターネットから見える資産社内だけのサーバ本社のWebサイトメールサーバVPN装置台帳にもあり、外からも見える・終わったキャンペーンサイト・テスト用のサブドメイン・放置された拠点のVPN・RDP・公開設定のストレージ・試しに立てたAIのAPI台帳にないのに、外から見えるEASMが探すのは右の円。とくに台帳にない部分が狙われやすい
図3 社内の管理台帳と、インターネットから見える資産のずれ

最近は、ここに AI 関係のものも加わっています。たとえば MCP(Model Context Protocol:AI エージェントが外部のツールやデータにつなぐための共通の決まり)のサーバです。クラウドセキュリティ企業の Wiz は2026年7月、MCP を使っているクラウド環境のおよそ6分の1で、インターネットに公開された MCP サーバが見つかり、公開されたもののおよそ7割は、認証していない相手にも使えるツールの一覧を返したと報告しています。試しに立てた API がそのまま残る、という昔からある問題が、AI でもくり返されていると言えます。

EASM(ASM)とは

EASM(External Attack Surface Management:外部アタックサーフェス管理)は、インターネットから見える自社の IT 資産を、攻撃者と同じ「外側」から見つけて、そこにあるリスクを継続的に確かめていく取り組みと、そのためのツールです。アタックサーフェス(攻撃面)は、攻撃者が狙える入口の集まりのことです。

経済産業省の「ASM(Attack Surface Management)導入ガイダンス」は、ASM を「組織の外部(インターネット)からアクセス可能な IT 資産を発見し、それらに存在する脆弱性などのリスクを継続的に検出・評価する一連のプロセス」としています。国内では、外部に限った意味で単に ASM と呼ぶことも多いので、この記事では EASM と ASM をほぼ同じ意味で使います。

建物にたとえると、EDR(端末の中の不審な動きを見張るしくみ)や社内の監視は、建物の中に付けた防犯カメラです。EASM は、建物の外周を歩いて回り、開いたままの勝手口や壊れた窓がないかを外から点検する人にあたります(図4)。

内側の見張り(EDR・監視など)外周の点検(EASM)入ってきた人の動きを中で見張る開いたままの勝手口外から回って、開いている入口を探すEASMは、攻撃者と同じ「外側」から自社を見る
図4 内側の見張りと、外周の点検のちがい

防犯カメラは、入ってきた人の動きを見つけるのが得意です。外周の点検は、入られる前に入口そのものを減らすためのものです。どちらかがあればよいのではなく、受け持つ場所が違います。

脆弱性診断とのちがい

よく比べられるのが脆弱性診断です。ガイダンスでは、対象、脆弱性の確かさ、相手への影響の3点で違いを整理しています。年に1回などの頻度で深く調べる脆弱性診断に対して、EASM は未把握のものも含めて広く、くり返し見ます(図5)。

脆弱性診断(年1回など)EASM・ASM(継続的)深く把握済みの資産を、攻撃をまねて調べるこの間に増えた資産は見えない未把握のものも含めて、外から広く、くり返し見る(見えている情報から「可能性」を判断する)1月12月どちらかではなく、広く浅く見つけ、気になるものを深く調べる
図5 脆弱性診断と EASM の調べ方のちがい
比べる点脆弱性診断EASM(ASM)
対象把握している資産(診断を申し込んだもの)未把握のものを含め、インターネットから届く資産
脆弱性の確かさ攻撃をまねたリクエストを送って応答を見るので、確度が高い画面やバージョン表示など、ふつうのアクセスで得た情報から判断するので「可能性がある」にとどまることが多い
相手への影響監視装置がアラートを出したり、システムに負荷がかかったりすることがあるほとんどない
頻度年1回や、大きな改修のときなど継続的(毎日〜毎週など)

EASM で「見つける」、気になるものを脆弱性診断で「深く確かめる」と組み合わせるのが自然な使い方です。なお、製品によっては EASM の中に、承認したうえで確認用のリクエストを送る機能を持つものもあります(あとの「リスクを判断する」で説明します)。

EASM・ASM・CAASM のちがい

名前が似たものに CAASM(Cyber Asset Attack Surface Management)があります。EASM が外から見るのに対して、CAASM は EDR、AD(Active Directory)などの ID 管理、クラウドの管理画面、CMDB(構成管理データベース)など、社内ですでに使っている道具と API でつなぎ、資産の情報を集めて重複をまとめるものです(図6)。

EASM:外から見るCAASM:手持ちの道具から集めるDNS証明書(CT)WHOIS外からの走査自社インターネットにある公開情報と、外からの観測で資産を探すEDRAD・ID管理クラウドの管理CMDB・資産台帳まとめた一覧社内で使っている道具とAPIでつなぎ、重複をまとめて内側の資産も見るEASMは外から、CAASMは内側のデータから。見る向きが違う
図6 EASM と CAASM の見る向きのちがい
呼び方見る向き主な対象主な情報源
EASM(ASM)外(インターネット)から内へ公開しているドメイン、IP アドレス、Web サイト、VPN、API、クラウドのストレージなどDNS、WHOIS などの登録情報、証明書(CT)、外からの走査
CAASM社内のデータを集めて俯瞰社内・社外の IT 資産、クラウドのアカウント、ID、端末EDR、AD、クラウドの管理、CMDB などとの API 連携

最近は、EASM、CAASM、脆弱性管理、攻撃経路の分析などを1つの基盤にまとめ、「エクスポージャー管理(Exposure Management:攻撃にさらされている状態をまとめて管理すること)」と呼ぶ製品が増えています。EASM がその中の1つの機能として提供されていることも多いです。

EASM で見つかるもの

EASM は、組織名やドメイン名を手がかりに、そこからつながる公開資産をたどって並べ、それぞれの気になる点を出していきます。イメージは図7のとおりです。

組織名(起点)example.jpwww.example.jp問題なし(見張りを続ける)campaign19.example.jp古いCMSのまま放置dev-test.example.jpログイン画面が丸見えremote.example.jpRDPのポートが開いているai-api.example.jp認証なしで応答する※ドメイン名はすべて説明のための例です組織名からたどって公開資産を並べ、それぞれの「気になる点」を出す
図7 組織名からたどって公開資産を並べるイメージ(例)

各社の資料に挙がっている検出の例を、よく見つかるものから並べると次のようになります。

見つかるものよくある例なぜ危ないか
忘れられた Web サイト・開発環境終わったキャンペーンサイト、テスト用のサブドメイン、古い CMS のまま残ったサイト更新されず、古い脆弱性が残りやすい。ログイン画面が公開されていることもある
リモート接続の入口放置された VPN 機器、インターネットに開いた RDP(Windows のリモートデスクトップ)や SSHパスワードの総当たりや、VPN 機器の脆弱性を突いた侵入の入口になりやすい
想定していないポート・サービスデータベースやファイル共有(SMB)など、外に出すつもりのなかったサービス設定ミスで公開されたものは、認証が弱いままのことが多い
公開設定のストレージ誰でも読める設定になったクラウドのストレージ中のファイルがそのまま漏れる
証明書・ドメインの不備期限切れや期限間近の証明書、古い TLS や弱い署名、更新を忘れたドメイン利用者への警告、通信の安全性の低下。手放したドメインを他人に取られることもある
認証のない AI の API試しに立てた LLM(大規模言語モデル)の API、MCP サーバ誰でもツールを呼べたり、つながった先のデータが読めたりする

「うちは台帳で管理しているから大丈夫」と考えている組織ほど、台帳の外にあるものに気づきにくいのが、EASM が必要とされる理由です。

各社の製品に共通するしくみ

調べた製品は、名前も画面の見せ方もそれぞれ違いますが、中で行っていることを並べてみると、図8の6つの層に整理できます。ここからは、この6つを順に見ていきます。

1起点を決めるドメイン・IP範囲・ASN組織名から広げる製品も2集めるDNS・WHOIS・証明書(CT)経路情報・外からの走査3自社のものか見分けるつながりの証拠と確からしさ迷うものは人が確認4台帳にする確認済み・候補・除外ラベル・持ち主を付ける5リスクを判断するポート・バージョン・証明書CVE・悪用状況・重要度6確かめて直す(製品により)無害な検証チケット・SIEM連携・再確認新しい資産・変化を見つけたら②からくり返すどの製品も、見つける → 見分ける → 判断する → 直す、を回している
図8 各社の製品に共通する6つの層(一般化したもの)
層何をするか主な情報・機能
① 起点を決める探し始める手がかり(シード)を決めるドメイン名、IP アドレスの範囲、ASN、組織名、WHOIS の登録者
② 集める手がかりからつながる情報を集めるDNS、WHOIS などの登録情報、証明書(CT・共有している証明書)、経路情報、外からの走査、Web ページの巡回、クラウドとの連携
③ 自社のものか見分ける見つかったものが自社やグループ会社のものかを判定するつながりの証拠、確からしさ(信頼度)、人による確認
④ 台帳にする確かめた資産を一覧にして、状態と持ち主を管理する確認済み・候補・除外などの状態、部門や子会社のラベル
⑤ リスクを判断する台帳の資産をくり返し調べ、気になる点に優先度を付けるポートとサービス、バージョン、証明書、ログイン画面、CVE、悪用の状況、資産の重要度
⑥ 確かめて直す直す人に届け、直ったかを確かめる(製品により)無害な検証、チケット管理や SIEM との連携、再スキャン

起点を決めて、つながりをたどる(①②)

多くの製品は、シード(起点)と呼ぶ手がかりから探し始めます。シードには、自社のドメイン名、IP アドレスの範囲、ASN(Autonomous System Number:インターネットの経路制御で組織のネットワークに付く番号)、組織名、WHOIS(ドメインの登録情報)の登録者などを使います。

EASM は、シードからつながる情報を何段もたどって、資産を広げていきます(図9)。たとえば、ドメインの証明書から別のサブドメインが見つかり、DNS の A レコード(名前から IP アドレスを引く記録)から IP アドレスが分かり、その IP アドレスが入っている範囲から別のホストが見つかる、という具合です。こうしたつながりを、グラフ(点と線の関係)として持っている製品が多いようです。

たどるほど見つかるが、確からしさは下がる1段目2段目3段目example.jpシード(起点)dev.example.jp証明書(CT)から203.0.113.10DNS(A)からmail.example.jpDNS(MX)から登録者:Example社WHOISからold.example.jp同じ証明書に載る名前203.0.113.0/24IPを含む範囲example-shop.jp同じ登録者203.0.113.77同じ範囲の別ホストexample-x.jp同名の別会社かも他社のものかもしれない→ 人が確かめる※ドメイン名と IP アドレス(203.0.113.0/24 は説明用のアドレス)はすべて例ですつながりをたどって広げ、離れたものほど「自社のものか」を確かめる
図9 シードからつながりをたどって資産を広げるイメージ(例)

データの集め方にも違いがあります。自前でインターネット全体を定期的に走査し、どのアドレスでどんなサービスが動いているかを貯めておく製品もあれば、DNS や証明書の情報を中心に、登録した範囲を調べる製品もあります。クラウドの管理と API でつなぎ、クラウド上の資産を直接取り込める製品もあります。

シードは誰が用意するか

利用者がシードを登録する形の製品と、組織名などから提供側(製品や調査チーム)が起点を用意して広げる形の製品があります。前者は調べる範囲を自分で決めやすく、後者は始めるまでの手間が少ない反面、見つかったものが本当に自社のものかを確かめる作業が増えます。新しく登録したシードが結果に出てくるまで、数日かかる製品もあります。

自社のものか見分けて、台帳にする(③④)

たどった先には、他社のものも混ざります。経済産業省のガイダンスも、CDN(コンテンツ配信ネットワーク)やクラウドでは IP アドレスが変わることがあり、DNS の状態によっては他社の資産が検出されることがあると注意しています。そこで各社の製品は、つながりの証拠や確からしさ(信頼度)を付け、確からしいものは自動で、迷うものは人が確認する形をとっています。

確かめた結果は、資産の状態として管理します(図10)。呼び方は製品で違いますが、「確認済み(台帳に入れる)」「候補」「要確認」「除外」のような分け方が多いです。SaaS や委託先のサービスのように、自社では直せないものを「依存先」として分けておける製品もあります。台帳に入れた資産には部門や持ち主のラベルを付けておき、あとの通知や修正の依頼に使います。

見つかった候補(未確認)自社の資産か?はい確認済み(台帳)くり返し調べる迷う要確認持ち主・委託先に聞くいいえ除外他社のもの・誤検知廃止・アーカイブ使わなくなったら止めて記録見つかったものを、人が確かめて台帳に入れるか外す
図10 見つかった資産の状態の分け方(一般例)

リスクを判断する(⑤⑥)

台帳に入れた資産は、くり返し調べます。確認済みの資産は毎日調べ直す製品が多いようです。ここでは、開いているポートとサービス、表示されるソフトウェアの名前とバージョン、証明書の期限や暗号の強さ、ログイン画面の有無などを集め、脆弱性の情報と照らし合わせます(図11)。

ふだんの調べ方(ふつうのアクセスの範囲)製品によっては:承認した資産だけ、検証まで行うセキュリティ担当自社EASMクラウドのサービス公開資産Webサーバなど脆弱性の情報CVE・KEV・EPSS1確認済みの資産を順に調べる2ふつうのアクセスWebを開く・TLSでつなぐ3応答画面・ヘッダ・証明書4ソフトとバージョンを推定5脆弱性の情報と照らし合わせる6当てはまりそうなCVE深刻度・悪用の状況7「可能性あり」として記録8検証を許可する9無害な確認用のリクエスト10応答11本当に突けるか判定して通知ふつうは「可能性」まで。確かめるには承認したうえで検証する
図11 公開資産の調べ方:ふつうのアクセスと、承認したうえでの検証(一般例)
  • ①〜③:EASM が確認済みの資産に、Web ページを開く、TLS でつなぐといったふつうのアクセスをし、画面、HTTP ヘッダ、証明書などの応答を受け取ります。
  • ④:応答から、動いているソフトウェアとバージョンを推定します。
  • ⑤〜⑦:脆弱性の情報(CVE、悪用が確認されたものの一覧、悪用される見込みなど)と照らし合わせ、当てはまりそうなものを「可能性あり」として記録します。
  • ⑧〜⑪:製品によっては、担当者が許可した資産に限り、無害な確認用のリクエストを送って、本当に突けるかを判定します。

①〜⑦はふつうのアクセスで得た情報から判断するため、ガイダンスにもあるとおり、結果は「脆弱性がある可能性」です。バージョン表示を隠しているサーバや、修正だけを取り込んだサーバもあるので、ないのに出る(偽陽性)ことも、あるのに出ない(偽陰性)こともあります。

⑧〜⑪の検証は、ふつうのアクセスより一歩踏み込むので、製品側も事前の承認を前提にしています。使う前に、自社のものと確認できた資産だけを対象にすること、委託先やクラウド事業者の規約に触れないかを確かめておくことが大切です。ガイダンスも、他社が管理するシステムを調べる前には承認をとるよう勧めています。

製品によって違うところ

共通するしくみの上で、製品ごとに考え方が分かれているところもあります。図12の3つの軸で見ると整理しやすくなります。

起点の決め方利用者がシードを登録組織名から提供側が広げる範囲を決めやすい始めやすい。確認作業は増える製品の位置づけEASMの単体製品露出管理などの基盤の一部ほかの製品と組み合わせやすい社内の資産や攻撃経路と合わせて見る確かめ方ふつうのアクセスで推定承認のうえ無害に検証相手への影響が小さい確かさが上がる。事前の承認が要る良し悪しではなく、自社の体制と目的に合う側を選ぶ
図12 製品によって考え方が分かれる3つの軸
軸選ぶときに確かめたいこと
起点の決め方登録できるシードの種類と上限、反映されるまでの時間、子会社やブランドをどう扱うか
製品の位置づけ今使っている EDR・脆弱性管理・SIEM などの基盤とつながるか、社内の資産や攻撃経路と合わせて見る必要があるか
確かめ方検証の機能があるか、既定で動くのか、止められるのか。調べる頻度と、調べるポートの範囲

使い始めてから回るまでの流れ

EASM は、ツールが資産を見つけるだけでは何も直りません。見つけたものを持ち主に届け、直してもらい、直ったかを確かめるところまでが1つの流れです。登場する人と道具を並べると、図13のようになります。

最初に1回:範囲を決めて台帳を作るくり返し:見つけて、直してもらい、直ったか確かめるセキュリティ担当運用者EASMクラウドのサービス公開資産自社の資産チケット管理ITSM資産の持ち主部門・委託先1シードを登録ドメイン・IP範囲など2つながりをたどって集める3候補の一覧4承認・除外自社のものか確かめる5定期的に調べる6応答7変化とリスクを検出優先度を付ける8通知優先度の高いものから9修正のチケット自動で起票する製品も10対応の依頼期限付き11パッチ・設定変更・停止12完了の報告13もう一度調べる再スキャン14解消を確かめて記録見つけるのはEASM、直すのは資産の持ち主。間をつなぐのが運用
図13 EASM を使い始めてから、見つけたリスクが直るまでの流れ(一般例)
手順誰が・どこで何をするか
①〜②セキュリティ担当 → EASMシード(ドメイン、IP アドレスの範囲など)を登録する。EASM がつながりをたどって資産を集める
③〜④EASM → セキュリティ担当見つかった候補を確かめ、自社のものは承認、他社のものや誤検知は除外する
⑤〜⑦EASM ⇔ 公開資産確認済みの資産を定期的に調べ、新しい資産や設定の変化、リスクを見つけて優先度を付ける
⑧EASM → セキュリティ担当優先度の高いものから通知する
⑨〜⑩セキュリティ担当 → チケット管理 → 持ち主修正のチケットを起票し、期限を付けて持ち主に依頼する。EASM からチケットを自動で起票できる製品もある
⑪〜⑫資産の持ち主パッチの適用、設定の変更、使っていなければ停止する。終わったら完了を報告する
⑬〜⑭EASM → 公開資産もう一度調べて(再スキャン)、本当に解消したかを確かめて記録する

①〜④は最初に一度まとめて行い、⑤〜⑭はくり返します。新しく見つかった資産は、③〜④と同じように確かめてから台帳に入れます。

導入の進め方

導入は、次の4つの STEP で進めると整理しやすいです。いきなりグループ全体に広げず、小さく始めて、回るようになってから広げていきます。

範囲を決める(図13の①)

最初は、本社の主要なドメインと IP アドレスの範囲だけをシードにして始めます。グループ会社やブランド、海外拠点、買収した会社などは、運用が回り始めてから足していきます(図14)。

本社の主要なドメイン・IP範囲まずここからグループ会社・ブランド海外拠点・買収した会社委託先が持つ資産最初に決めておくこと□ 調べる範囲(シード)□ 子会社・委託先の扱い□ 検証の機能を使うか□ 見つかったときの連絡先□ 結果を誰が見て判断するか小さく始めて、広げていく
図14 調べる範囲は、本社の主要なドメインから広げていく

あわせて、検証の機能を使うかどうか、子会社や委託先が持つ資産をどう扱うか、見つかったときに誰に連絡するかも決めておきます。他社が管理しているシステムを調べるときは、事前に相手の承認をとるのがガイダンスの勧めです。

候補を確かめて台帳にする(図13の②〜④)

初めて動かすと、思った以上に多くの候補が出てきます。まず他社のもの、CDN、誤検知を除外し、自社のものだけを確認済みにします。そのうえで、使っていないもの、出すつもりのなかったものを洗い出します(図15)。

見つかった候補(最初はかなり多い)自社のもの(確認済みにする)出していてよい見張りを続ける出していてはいけないSTEP 3 で持ち主へ他社のもの・CDN・誤検知を除外する使っていない・意図しない公開を洗い出す迷うものは「要確認」に置いて持ち主に聞く最初の洗い出しで、ふるいにかけてから台帳にする
図15 最初の洗い出しで、候補をふるいにかける

ここで迷うものを無理に判断する必要はありません。「要確認」にしておき、次の STEP で持ち主に聞きます。

持ち主を決める(図13の⑨〜⑩の前提)

EASM の運用でいちばん手間がかかるのが、見つかった資産の持ち主(アセットオーナー)を決める作業です。ガイダンスで紹介されている企業の事例でも、ツールで見つかった資産がどの部門のものかを特定するのが難しいという声が多く挙がっていました。DNS や証明書の申請記録、クラウドのアカウント、ページの内容、契約の記録などを手がかりにたどります(図16)。

dev-test.example.jp(持ち主不明)DNSを管理している人証明書を申請した人クラウドのアカウント画面やページの内容契約・発注の記録手がかり情報システム部社内のシステム事業部キャンペーン・営業など委託先契約した会社持ち主(オーナー)分からないときは:セキュリティ担当が一時的に預かり、期限を決めて「止めるか・残すか」を判断する持ち主が決まらない資産は、いつまでも直らない
図16 手がかりをたどって、資産の持ち主を決める

どうしても分からないものは、セキュリティ担当がいったん預かり、期限を決めて止めるか残すかを判断します。持ち主が決まらないままの資産は、通知を出しても誰も直さないので、いつまでも残ってしまいます。

ふだんの流れにつなぐ(図13の⑤〜⑭)

最後に、EASM の結果をふだん使っている道具の流れに乗せます。修正の依頼はチケット管理に、ログとして見たいものは SIEM に、台帳は CMDB や CAASM と合わせます(図17)。EASM の画面を誰かが見に行かないと何も起きない、という形にしないのがポイントです。

チケット管理(ITSM)修正の依頼・期限SIEMログと合わせて見るCMDB・CAASM台帳をそろえるSOAR・自動化決まった対応を自動でチャット・メール担当への通知EASM見つけた結果を、ふだん使っている流れに乗せる
図17 EASM の結果を、ふだん使っている道具につなぐ

どの道具とつなげられるか、どの情報が渡せるか(すべての資産か、確認済みの資産だけか)は製品によって違うので、導入前に確かめておきます。

入れたあとの運用

EASM は、入れて一度きれいにしたら終わり、というものではありません。新しいサイトやクラウドのサーバは毎日のように増え、新しい脆弱性も毎日公開されます。ここでは、役割分担、周期、優先順位の付け方を見ていきます。

役割分担:見つける人と直す人

多くの組織では、EASM の結果を見る人(社内の SOC や、運用を委託した MSSP などの運用者)と、実際に資産を直す人(情報システム部門、事業部、委託先などの持ち主)が別です。この間の受け渡しを決めておくことが、運用が回るかどうかを左右します(図18)。

運用者(SOC・MSSP など)資産の持ち主(IT・事業部・委託先)誤検知・他社のものを外す悪用の状況などを付けて判断影響と直し方を整理修正のチケットを起票直ったかをもう一度調べる実機を調べるパッチ・設定変更使っていなければ止めるすぐ直せないときは期限付きでリスク受容を申請依頼完了の報告見つけて判断するのが運用者、直すのが持ち主
図18 運用者と資産の持ち主の役割分担(一般例)
担当主な仕事
運用者(SOC・MSSP など)誤検知や他社のものを外す。悪用の状況などの情報を付けて判断する。影響と直し方を整理してチケットを起票する。直ったかをもう一度調べる
資産の持ち主(IT・事業部・委託先)実機を調べる。パッチの適用、設定の変更、使っていないものの停止を行う。すぐに直せないときは、代わりの対策と期限を決めてリスク受容(リスクを分かったうえで受け入れること)を申請する

どの周期で何をするか

やることを周期で分けておくと、毎日の確認が重くなりすぎません(図19)。下の表は一般的な例なので、組織の規模や体制に合わせて変えてください。

1か月目2か月目3か月目日次新しい資産・緊急の脆弱性の確認週次新しい資産の承認・期限切れチケットの確認月次持ち主不明の追跡・直ったかの確認・報告四半期シードの見直し・運用ルールの見直し細かい確認は毎日、見直しは間をあけて
図19 周期ごとの運用のイメージ
周期主にやること主な担当
日次新しく見つかった資産の確認、悪用が確認された脆弱性やゼロデイ(修正がまだない脆弱性)に当てはまるかの確認、優先度の高い通知の一次判断運用者(SOC・CSIRT)
週次新しい資産の承認・除外、悪用の見込みが変わったものの確認、期限を過ぎたチケットの確認運用者 + IT 部門
月次持ち主が分からない資産の追跡、直ったかの再確認、期限内に直せた割合や直るまでの日数の集計と報告セキュリティの責任者
四半期・年次シードの見直し(新しいドメイン、買収した会社など)、運用ルールの見直しCISO・セキュリティ部門長

参考までに、米国では CISA(米国のサイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁)が2022年に出した拘束力のある運用指令 BOD 23-01 で、連邦政府機関に対し、資産の自動での洗い出しを7日ごと、見つかった資産の脆弱性の洗い出しを14日ごとに行うよう求めています。民間企業に向けた決まりではありませんが、周期を考えるときの目安になります。

優先順位の付け方

EASM を動かすと、通知はかなりの数になります。CVSS(共通脆弱性評価システム:脆弱性の深刻度を 0.0〜10.0 で表す指標)の点数だけで並べると、全部が急ぎに見えてしまいます。そこで、次の3つを組み合わせて絞り込む考え方がよく使われます。

  • 外から直接届くか:EASM が見つけた資産は、もともと外から見えているものですが、ログイン画面の奥にしかない機能などは別に考えます。
  • 悪用が確認されているか:CISA の KEV カタログ(Known Exploited Vulnerabilities:実際に悪用が確認された脆弱性の一覧)に載っているか。CISA も、KEV を優先順位の判断の材料にするよう呼びかけています。
  • 悪用されやすいか:FIRST の EPSS(Exploit Prediction Scoring System:今後30日以内に悪用される見込みを 0〜1 の確率で毎日出す指標)と、CVSS の深刻度。

これを判断の順番にすると、図20のようになります。

見つかったリスク外から直接届くか?はい悪用が確認済み(KEVに載る)?いいえ悪用されやすい(EPSS・CVSS)?はいP1 緊急すぐ対応(例:数日以内)はいP2 優先例:1週間程度でいいえいいえP3 計画的に例:1〜3か月でP4 受け入れて見張る代わりの対策・期限と理由を記録代わりの対策があり、承認されたものは※期限は説明のための例です。自社のルールとして決めてください深刻度だけで並べず、届くか・悪用されているかで絞る
図20 優先順位の決め方の例
優先度当てはまるもの期限の例
P1 緊急外から直接届き、KEV に載っている(悪用が確認されている)数日以内(24〜72時間など)
P2 優先外から直接届き、EPSS が高い、または CVSS で「重大」(9.0 以上)1週間程度
P3 計画悪用の見込みが低いもの、軽い設定の不備1〜3か月
P4 受容WAF などの代わりの対策があり、期限付きで受け入れを承認したもの期限と理由を記録し、見張りを続ける

期限は、組織のルールとして決めるものです。表の数字は考え方の例として見てください。P4 の代わりの対策としては、仮想パッチも選択肢になります。

つまずきやすい点

つまずき何が起きるか対策
最初から全部を対象にする候補が多すぎて確認が終わらず、運用が始まらない本社の主要なドメインから始め、回り始めてから広げる
結果をそのまま信じる他社の資産や、バージョンの見誤りによる誤検知に振り回される確からしさの低いものは人が確かめる。気になるものは脆弱性診断で深く確かめる
持ち主を決めない通知は出るが誰も直さない台帳に入れるときに持ち主を決める。不明なものは期限付きで預かる
深刻度だけで並べる通知が多すぎて、本当に急ぐものが埋もれる外から届くか、KEV、EPSS を組み合わせて絞る
検証の機能を確かめずに使う委託先やクラウド事業者の規約に触れる、相手のシステムに負荷をかける自社のものと確認できた資産に限り、承認をとってから使う
入れて終わりにする新しい資産が増え、すぐに元の状態に戻る周期ごとの作業を決め、シードを定期的に見直す

CTEM との関係

最近は、EASM を含む考え方として CTEM(Continuous Threat Exposure Management:継続的な脅威エクスポージャー管理)という言葉もよく聞きます。Gartner が提唱した、範囲を決める(Scoping)、発見(Discovery)、優先順位付け(Prioritization)、検証(Validation)、動員(Mobilization:関係する人を動かして直すこと)の5段階をくり返す取り組みです。EASM は、この輪の中で主に「発見」を受け持ち、製品によっては優先順位付けや検証の一部まで受け持ちます(図21)。

範囲を決めるScoping発見Discovery優先順位付けPrioritization検証Validation動員MobilizationCTEMくり返すEASMの受け持ち太枠:主に受け持つ細枠:一部を受け持つ点線:人や他の道具が中心※この記事の整理ですEASMは、CTEMの輪のうち「見つける」部分を受け持つ
図21 CTEM の5段階と、EASM が受け持つところ(この記事の整理)

CTEM は製品の名前ではなく、取り組み方の名前です。EASM を入れただけで CTEM になるわけではなく、範囲の決め方や、直す人を動かす仕組みまで含めて回すことが求められます。

まとめ

EASM は、外から見える自社の資産を攻撃者と同じ外側から見つけ、リスクを継続的に確かめていくための取り組みです。この記事の内容を表にまとめます。

ポイント内容
なぜ必要か入口が社内の境界の外に散らばり、攻撃者は CT ログなどの公開情報から入口を探しに来る。台帳にない資産ほど狙われやすい
EASM とはインターネットから見える自社の資産を外から見つけ、リスクを継続的に確かめる。脆弱性診断は深く、EASM は広く。CAASM は社内の道具のデータから集める
共通するしくみ起点を決める → 集める → 自社のものか見分ける → 台帳にする → リスクを判断する → 確かめて直す、の6つの層
製品による違い起点の決め方(シードを登録する/組織名から広げる)、位置づけ(単体/基盤の一部)、確かめ方(ふつうのアクセスで推定/承認のうえ検証)
導入本社の主要なドメインから小さく始め、候補を確かめ、持ち主を決め、ふだんの道具につなぐ
運用見つける人と直す人の受け渡しを決める。周期ごとの作業を決める。外から届くか・KEV・EPSS で優先順位を絞る

まずは、自社のドメインと IP アドレスの範囲を一覧にして、「外から自社がどう見えているか」を知るところから始めるのがよいと思います。

参考にした資料

この記事は、次の資料で内容を確かめて書きました。製品の公開資料は、しくみを一般化するために読み比べたもので、記事の本文は特定の製品の説明ではありません。仕様や名称、提供状況は変わることがあるので、最新の情報はリンク先とメーカーへの問い合わせで確かめてください。

あとがき

各社の資料を並べて読んでみると、資産を見つける部分の作りはかなり違うのに、最後に効いてくるのは「誰が直すのか」を決める地味な作業だと感じました。ガイダンスの事例で、見つかった資産の持ち主の特定に苦労したという声が多かったのも、うなずけます。製品を比べる前に、自社のドメインと IP アドレスの範囲を一覧にしてみるだけでも、気づくことがあると思います。

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